不調ドイツに金融政策を合わせれば緩和バイアスに

 このままドイツが「帰ってきた欧州の病人(The sickman returns)」の言葉通り、長期低迷局面が突入していくのだとすれば、「不調のドイツ」を放置できないECBは緩和バイアスに直面する可能性がある。

 歴史は繰り返すのだとすれば、中長期的に警戒すべきは「ドイツ以外の加盟国」に過度な緩和環境が用意された結果としての経済・物価情勢の過熱であろうか。

 当面の「次の一手」を考える上では大き過ぎる視点ではあるが、良くも悪くもユーロ圏の政治・経済の中心はドイツであり、その不調がもたらす意味は時間軸の長短を織り交ぜつつ、熟慮したいテーマである。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年12日14時点の分析です

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中