ドジャースとしても契約上、ストップをかけることはできない。本人が出たいと言えば、それを尊重するしかない。
ただし登板時のイニングや球数制限、もしくは東京ラウンドにおけるチーム帯同そのものを見送り、勝ち上がった場合のみ米国ラウンドから合流させるなど、何らかの制約を設ける可能性は高い。球団経営の観点から見れば、極めて妥当かつ自然な判断である。
それでも、米球界関係者の間では、単なるリスク管理論を超えた声が広がりつつある。
「なぜ、ヨシノブ・ヤマモトはそこまで背負おうとするのか」
ロイ・ハラデイと由伸
この問いに象徴されるように、山本の姿勢は合理性だけでは説明できない。チームのため、国のために投げるという発想そのものが、現代MLBではもはや主流ではないからだ。
その文脈で話題となったのが、チームメートであるフレディ・フリーマン内野手の評価である。フリーマンは山本の投球を見て、かつての名投手で2017年に自ら操縦する飛行機事故により40歳の若さで他界したロイ・ハラデイ氏を思い起こしたという。
重要なのは、これが単なる投球フォームや球質の類似性を指しているわけではない点だ。
フィラデルフィア・フィリーズのロイ・ハラデイ投手(写真:AP/アフロ)
現役時代にMLB通算203勝、サイ・ヤング賞2度、没後の2017年に母国・カナダで野球殿堂入り、2019年には米国でも野球殿堂入りを果たした文字通りの「レジェンド右腕」。
そのハラデイ氏は、先発・中継ぎ・抑えという分業制が完全に定着した2000年代においても、完投や長いイニングへの執着を捨てなかった稀有な存在だった。必要とされれば連投も厭わず、役割を選ばず、逃げ道を作らない。その姿勢は当時ですら「時代錯誤」と評される一方で、圧倒的な尊敬を集めていた。