金融政策運営のカギを握る審議委員の後任人事

【衆院議員定数削減問題の影響】
 衆院議員定数削減問題は衆院解散に影響するだろうか。

 自民党と日本維新の会は、連立合意文書に基づき、議員立法で衆院議員定数削減法案を提出した。法施行後1年以内に具体策をまとめられない場合、小選挙区25、比例代表20の議席を減らすと規定している。参政党が条件付きで賛成する可能性を示唆したものの、現時点では12月17日の臨時国会・会期末までに成立する可能性は低い。

 連立合意文書では、「令和七年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」と明記された。法案提出に至らない場合、日本維新の会の幹部は連立政権から離脱する可能性を示唆していたが、法案提出をもって両党合意を満たしたと言える。

 日本維新の会の吉村代表も、12月12日のラジオ番組において、定数削減法案を巡って高市首相が約束を守り、自民党をまとめてくれたと言及している。日本維新の会は連立政権から離脱せず、ひいては連立離脱を大義名分とした年末解散の可能性もほぼなくなったとみられる。

 衆院議員定数削減法案は継続審議になる見通しだ。仮に、2026年の通常国会で成立しても、実際に定数削減が確定するまで時間を要する。小選挙区の区割りは、2026年9月までに公表される2025年国勢調査・人口等基本集計結果を踏まえて審議される見通しのため、定数削減の確定は2027年後半以降となるだろう。

 2020年国勢調査結果に基づき、「1票の格差」を是正するために実施された小選挙区の「10増10減」ですら区割りの調整に時間を要し、改正公職選挙法が施行されたのは2022年末だった。今般の定数削減も調整に時間を要するだろう。高市首相は定数削減が確定する前に衆院解散に踏み切る可能性が高い(そもそも定数削減問題は首相の解散権を制約しない)。

【金融政策運営】
 先行きの経済政策はどうなるであろうか。まず、日銀の金融政策について。金融市場では、2026年半ばに向けて政策金利が1.0%へ引き上げられるとの見方が多い。ただ、上述の通り、通常国会・会期末の衆院解散、夏の総選挙となれば、日銀の利上げ時期に影響する可能性がある。日銀は選挙期間中の利上げ決定を避けるだろう。

 なお、2026年中には、野口審議委員と中川審議委員の2名が任期満了を迎える。高市政権が後任を選ぶことになるが、日銀審議委員は衆参両院による同意人事である。両院の賛成が得られなければ、白紙となる。高市政権が、参院でどの主要野党と協力するか次第で人選は変わる可能性がある。

 現時点では、2025年度補正予算案に賛成している国民民主党などの協力を得る可能性が高そうだ。経済学者である野口審議委員の後任には、金融政策正常化に慎重な候補を選びやすいのではないか。

 ただ、野口委員はもともとリフレ派、ハト派の位置づけなので、大勢に影響しないだろう。影響が大きくなりそうなのは、2027年に任期満了を迎え、ともにタカ派である田村審議委員と高田審議委員の後任人事だ。