著名コラムニスト「米国の右派はこの戦いに勝ちつつある」と嘆く
英紙ガーディアンの国際担当ピーター・ボーモント上級記者は12月9日付で「欧州は移民によって文明の崩壊に向かっているという露骨な人種主義に基づく世界観が米国の政策判断を形作りつつある。変わりゆく世界を前にした白人高齢男性の混乱した恐怖だ」と指摘する。
「移民が欧州国家を希釈し、国を弱体化するという主張は人種差別的論理であり、トランプ氏とその側近は欧州の極右政党を支援すべきだと唱えている。欧州は聞く価値がないという物語をトランプ氏は自ら正当化している」と非難している。
英紙タイムズの著名政治コラムニスト、ダニエル・フィンケルスタイン氏も同日付でトランプ政権の新NSSと米右派の歴史観の変化が80年続いた自由主義的国際秩序(パックス・アメリカーナ)を終わらせつつあり、欧州に深刻な危機をもたらしていると論じている。
米保守派コメンテーター、タッカー・カールソン氏は英国が第二次大戦に参戦したのは「不要な災厄」で、ナチスのアドルフ・ヒトラーがポーランドを侵略しても「英国には関係ない」と主張する。これは米共和党が向かっている方向性を知る上で重要な洞察を与えているという。
「カールソンや多くの右派が第二次大戦を見直しているのは米国第一主義への回帰を望んでいるからだ。それは日本軍による真珠湾攻撃の後に米国が放棄せざるを得なかった孤立主義的立場だ。そして彼ら(米国の右派)はこの戦いに勝ちつつある」(フィンケルスタイン氏)
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。


