2025年8月15日、ウクライナのゼレンスキー大統領および欧州各国首脳と会談した米トランプ大統領(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)
第2次トランプ政権「NSS」が投げかけた“欧州からの距離”
NATO(北大西洋条約機構)加盟の欧州諸国が、徴兵制復活へとハンドルを切り始めた。きっかけは2022年2月にロシアのプーチン大統領が強行したウクライナ本土への侵略戦争だが、理由はそれだけではなさそうだ。
西側の盟主・アメリカが、大統領に再選したトランプ氏の「脱欧・親露」志向と「気まぐれ」により、安全保障上の大きなリスクになりつつあるからだ。
トランプ氏の欧州に対する関心は低く、時折NATO脱退を示唆するほど。ウクライナへの軍事支援にもあまり乗り気でない。その一方で、ウクライナ戦争の一連の停戦交渉において、プーチン氏をあからさまに贔屓(ひいき)する。
仮にトランプ氏とプーチン氏の2人だけで和平協定をまとめた場合、どんな密約が交わされるのか、西欧にとって気が気ではなく、まさに「前門の虎、後門の狼」である。
しかも、欧州を逆なでするような内容の「NSS(National Security Strategy/国家安全保障戦略)」が、12月5日に米ホワイトハウスから発表された。第2次トランプ政権として初の文書で、現政権の軍事・外交・経済などの分野における安全保障上の優先順位を示すものだ。
アメリカが掲げる「自国第一主義(アメリカ・ファースト)」に、一層磨きをかけた内容で、ポイントは、安全保障の軸足をおひざ元の南北アメリカ大陸(西半球)に置き、代わりに欧州・中東への軍事的関与を相対的に見直している点にある。
この新戦略についてトランプ氏は、NSS内で「モンロー主義(欧州との総合不干渉)に対する『トランプ・コロラリー(corollary/補論)』だ」と強調する。
いずれにせよ、トランプ政権が事あるごとに示唆する「欧州離れ」を、NSSで正式に明文化したインパクトは、欧州にとって極めて大きい。
“欧州離れ”を示唆する米トランプ大統領(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)
米政府が公表した「国家安全保障戦略(NSS)」

