断崖絶壁に立つ「高市政権」が見いだせる打開策

 一方、もう片方の当事者である自民党の高市執行部は、早々に予期せぬ激震に見舞われた格好となった。こちらは、より深刻度が大きい。

10日、自公党首会談後に記者団の取材に応じる自民党の高市総裁=東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)

 石破茂首相の退陣意向表明に伴う国会での首相指名選挙は、10月下旬に行われる予定だ。現時点では野党が統一候補を出せる状況にないため、高市首相が誕生する公算は大きい。

 しかし、自民党の衆院議席は196(定数465)であり、過半数を大きく割り込む少数与党だ。内閣を発足させることができても、政権運営は非常に困難なものとなる。どの法案も予算案も、野党の賛成なくして成立はあり得ないためだ。

 また、野党が協力して内閣不信任決議案を出せば、いつ可決してもおかしくないという断崖絶壁に立ち続けることとなる。

 そんな「高市政権」の数少ない打開策を挙げるとするならば、公明党不在のほうが、かえって進捗を見込める政策に傾注する道ではないか。

 公明党が標榜する中道改革路線に比して、10月に就任したばかりの高市早苗総裁率いる自民党新執行部は、保守色が特徴と評される。公明党のいない自民党政権となれば、これまで公明党に振り向けてきた配慮が不要となる。

 そうした保守色のある政策について、同じく保守色を有する野党である日本維新の会、国民民主党に呼び掛け、自民党との3党の枠組みで検討するという手が見いだせる。

 公明党が政治資金問題を理由に政権を離脱した以上、他党がその自民党と連立を組むというのは容易な選択肢ではない。しかし、維国両党との政策的連携は、石破政権で繰り返した実績がある。さながら「鬼のいぬ間に」といったところか。

 高市氏が先の総裁選で掲げたうち、例えばサイバーや宇宙といった「新たな戦争の態様にも対応できる国防体制の構築」や、インテリジェンス関係省庁の司令塔としての「国家情報局」の設置などが該当しそうだ。

 また、自民党政調会幹部だった高市氏が今年5月、石破茂首相を官邸に訪ねて要請した「スパイ防止法」の制定も挙がる。選択的夫婦別姓に代わる「通称名使用の拡大」や憲法改正も範疇に入るだろう。