死ぬほどつらいなら、死ぬより逃げたほうがいい

──失踪者たちの話を聞きながら、失踪するということに関して何をお感じになりましたか?

松本:「逃げる理由と少しの勇気があれば失踪は誰にでもできますよ」とこの本の帯に書きましたが、虐待、いじめ、親の常軌を逸した過干渉、返せない借金などなど、理由があれば失踪は選択肢としてアリだと私は思うようになりました。

 失踪することを勧めているわけではありませんが、死ぬほどつらいなら、死ぬよりも、むしろ逃げて生き直したほうがいいと思います。そういう選択肢もあるのだと理解しておくことは、心の支えになると思います。

──実は私も知人に失踪者がいます。もう何年も失踪しています。私は勝手に、彼は不幸になっていると想像していましたが、この本を読んで、もしかしたら案外楽しく生き直しているのかもしれないと思いました。

松本:私も取材をする前は、すごく暗い内容の本になるのではないかと想像しました。たしかに、皆さんそれなりに強烈な面を抱えた人生ですが、思いのほかちゃんと普通に生きている。失踪しても生きることができるのだということを感じました。

松本 祐貴(まつもと・ゆうき)
編集者・ライター
1977年、大阪府生まれ。雑誌記者、出版社勤務を経て、フリー編集者&ライターに。人物インタビュー、ルポ、医療など幅広いジャンルで執筆・編集を手がける。近年は失踪や孤立といった社会的テーマに注力。著書に『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)、『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)などブックライターとしても多数の作品に関わる。趣味は旅とワイン。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。