中国広東省東莞市にあるネクスペリアの半導体工場(2025年11月7日)
目次

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

半導体不足で混乱したクルマ産業

 オランダに本社を置く半導体メーカー、ネクスペリアの中国後工程工場(東莞)が、今年(2025年)10月4日に半導体の出荷を停止した。ネクスペリアの製品は車載向け個別半導体(ディスクリート半導体)の比率が高く、世界中の自動車メーカーは深刻な影響を受けることになった。

 実際、ホンダではメキシコ工場および北米工場での生産が停止した。日産自動車でも、追浜工場や九州日産工場の生産ラインが減産に追い込まれた。さらに、欧州ではフォルクスワーゲンやボルボが減産となり、ドイツの車載部品大手ボッシュでも複数工場が一時停止するなど、影響は広範に及んでいる。

 筆者は、今回の事態が表面化するまでネクスペリアという半導体メーカーをほとんど意識していなかった。そこで調査を進めたところ、以下の事実が判明した。

 ネクスペリアは、ドイツ・ハンブルクと英国・マンチェスターに前工程工場を持ち、ここで個別半導体、パワー半導体、アナログやロジック半導体などを製造している。そして、6インチおよび8インチウエハで作られたこれらの半導体は、中国・東莞、マレーシア・スレンバン、フィリピン・ラグナなどの後工程工場に送られ、パッケージングやテストが行われる。こうして完成した半導体が、各国の自動車部品メーカーに納入され、車載半導体として用いられている(図1)。

図1 オランダのネクスペリアの半導体工場一覧
拡大画像表示