なぜクルマメーカーが減産に追い込まれたのか

 前述のとおり、中国・東莞の後工程工場では年間500億個を超える半導体が出荷されており、その個数はきわめて多い。しかし、そのうち高電流・高耐圧のパワー半導体を別にすれば、大多数を占める個別半導体は、1個あたり数十円から、高くても100円程度にすぎない。

 さらに、世界の車載半導体市場においてネクスペリアが占める“金額ベースのシェア”を確認すると、ここ数年はわずか2~3%にとどまっている(図2)。

図2 車載半導体の世界市場とネクスペリアの世界シェア
出所:Claus Aasholm、“Did The Dutch Draw a Line ─ Or a Bottleneck?”、Semiconductor Business Intelligence(Oct 28, 2025)のデータを基に筆者作成
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 それでは、安価で、出荷金額シェアも小さい半導体の出荷が止まっただけで、なぜ自動車メーカーは生産ライン停止や減産に追い込まれるのか。

 一見すると説明がつきにくいが、調査を進めると次の事実が浮かび上がってきた。

 一例として、トヨタおよびホンダの車種ごとに、パワーコントロールユニット(Power Control Unit:PCU)、インバータ、電動パワーステアリング(Electric Power Steering:EPS)、ブレーキ制御、さらには各種電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)におけるネクスペリア依存度を図3に示す。

図3 トヨタのホンダの車種ごとのネクスペリアの依存度と影響度
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 その傾向として、ガソリン車などの内燃機関車よりも、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)の方がネクスペリア依存が高い。また、電動パワーステアリングに関しては、すべての車種でネクスペリアの半導体に依存していることが明らかになった。

 そして、これらのユニットで使われるディスクリート半導体に限ってみると、ネクスペリアの世界シェアは約40%に達する見込みである。