「登録日本語教員」という国家資格

佐藤:2023年に「日本語教育機関認定法」という法律ができました。そして国家資格「登録日本語教員」ができました。また、国に認定された日本語教育機関は、将来、登録日本語教員以外は雇えなくなります。

 昔は、日本語教育能力検定試験に合格すれば日本語を教える仕事に就くことができました。しかしこれからは、この資格を持たなければダメです。今、日本語教員養成機関に応募者が殺到しています。会社をやめた人や若い人が応募しています。

 私が30年前に日本語教師になったときには、ギリギリ食べていけるかどうかという収入の仕事で、結婚なんて望めないと考えていました。それでも面白そうだからやってみようと思いました。国家資格ができるなんて夢のまた夢でした。

 今は学生に言っています。「皆さんの将来の道として、日本語教員もあるのだ」と。ですから、質のいい日本語教員はどんどん増えると思います。

──その点は改善されてきているのですね。

佐藤:ただ、現状では留学ビザで入ってくる外国人が登録日本語教員の教える対象です。将来的には留学生だけではなく、就労で来た人達も教育の対象にするべきだと思います。そうなると教える側の人数が桁違いに多く必要になるので、登録日本語教員の資格を持つ人しか教えられないということでは対応しきれなくなるかもしれません。

 また、日本語の教育機関を運営していくためには、生徒からも一定の授業料を取る必要があると思いますが、そうしたビジネスを整備していくためにも多文化共生の基本法が必要です。

──日本社会にうまくなじめず、不登校になった移民の子が日本に対する反感を持ち、同じような人たちで集まり、犯罪組織のようになってしまうケースについて触れられています。

佐藤:本書では1990年代に日本で話題になった「ドラゴン」という残留中国人孤児のグループについて少し書きました。移民が増えていく過程で同じような団体ができていく可能性はあると思います。

 私たちは2008年に松本市に中信多文化共生ネットワーク(CTN)というNPO法人を立ち上げましたが、ドラゴンのような移民2世・3世などの犯罪組織を生み出さないことが立ち上げの目的でした。松本市には、現在そうした団体の活動は見当たりません。

 ただ、日本全国でどうなっているのかは分かりません。移民の子が教育不信や学校への不適応から不登校になり、日本に対して疑念、さらに憎しみを持つようになる可能性もあります。ですから、移民の子供への丁寧な日本語教育、さらに日本の子供も移民の子供も対象にした多文化共生の教育をしていかなければならない。