移民と日本人の居住エリアを分けない街づくり
──フランスでは2015年頃に、移民2世・3世によるテロ行為が起きました。フランスでは、フランス人の住むエリアと移民の住むエリアを分けており、移民の子供たちは移民の子だけの学校に行くので、大人になってもその国になじめないといった問題が語られました。やはり、移民と日本人を分けた街づくりをしないように気をつけることが重要なのでしょうか?
佐藤:そうだと思います。1つの国籍、1つの文化や宗教だけの人達が集まるコミュニティを作ることは避けたほうがいいでしょう。移民だけのコミュニティができると、移民の側にとっては楽ですが、我々受け入れ側からすると望ましいことではありません。
日本人も一緒に住み、一方で彼らの文化がしっかり保持される場があって、彼らによる集会や祭りがあることは決して悪いことではありません。日本人にも楽しいでしょう。このあたりの認識の整理が必要です。
──先日、別の外国人政策を研究する専門家に話をうかがったのですが、その方もやはり同じ問題意識を持たれていました。そのために、移民ばかりが1カ所で働かないようにするルールを、就労に関する法整備の中に作るべきではないかと指摘していました。
佐藤:たとえば、企業がマネジャークラスに、日本語が上手な、優秀なベトナム人を入れたとします。その人がいるため、その後に来る人もベトナム人が多くなり、しかも優秀なリーダーがいるので、新たなベトナム人はあまり日本語ができなくても仕事が回るようになります。結果として、ベトナム人ばかりになる。そういうこともあるようです。
では、それを法律で止めることが本当に正しいのかと言われれば、私は疑問を覚えます。
それよりも、その会社の日本人社員が、ベトナム人グループに入り、同じ会社の仲間として本当に深く交わることができるかどうか。例えば、ランチでベトナム人だけで集まって食べているところに、日本人社員が入っていって話ができるか。本当の意味で統合していくためには、そうした努力や工夫がとても大切だと思います。
ただこれは本当に難しいことです。私の大学でも、留学生と日本の学生が自然に会話をして、一緒にグループができるかというと、なかなかそうはなりません。移民が移民だけで固まらないように、配置を含めてさまざまな工夫を施すのは微妙なさじ加減です。本当の意味で上手いやり方を見つけた国はまだないかもしれません。