外国人にとって日本語はどこまで難しいか?
──ただ受け入れて、あとは何とかなっていくだろうでは、確かにうまくいかないですね。
佐藤:私は仙台に住んでいましたが、長野県松本市に引っ越した後、数カ月はゴミ出しにストレスを覚えました。仙台よりも管理が難しかったからです。あのゴミ出しを日本に来た外国人にいきなりできるかといったら、そんな簡単にできるはずがありません。
私たちは外国人にさまざまなルールを教えなければならないし、こちらも最初の何回かは相手が間違えても仕方がないと覚悟しなければなりません。移民たちが日本の生活に適応することは、日本人が思う以上に難しいことなのです。
日本に移り住んできた外国人に近所に住む日本人が思慮深い指導をするかといったら、今は全くしないですよね。それでも、外国人が何か間違えれば人は憤る。
──先生は34年間、在留外国人に日本語を教えてきた経験から、外国人が日本語を覚えることは必ずしも難しいことではないと書かれています。日本語が難しいというのは定説のようになっていますが、そんなことはないのですか?
佐藤:「話す・聞く」だけなら簡単にできるようになります。ただ、「書く・読む」は言われるように日本語は複雑で難しい。「話す・聞く」と「書く・読む」は分けて考えなければなりません。
今日、学校できちんとした日本語教育を受けたことのないフィリピン人の友達と話しました。彼女は問題なく上手に日本語でたくさん話します。ところが、彼女がメールを書くとなると、文章はたどたどしくなります。
日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字という3種類の文字を覚えなければなりません。しかも、漢字は1万字ほど知らないと新聞が読めない。英語など欧米の言語の多くはアルファベット1つで構成されています。たったの26字です。
それから、私達は行政の書類を読んで当たり前という文化にいますが、言語を覚えるか否か以前に、行政書類なんて全く読まないのが当たり前という国もあります。「ここに書いてありますよね」なんて言っても、そのような常識が通用しない場合があることも理解しなければなりません。
──米インディアナ大学で日本企業における働き方と多様性に関して研究しているヒラリー・ホルブラウ教授に話をうかがった時に、移民の受け入れでは日本語教育が大切だということ、また日本語教育にはノウハウがたくさんあるので、教える側も専門家を育てなければならないということを指摘していました。