「面倒を見ている温泉旅館に当たってみるよ」

──そのサオリさんとある種の信頼関係は構築されていたと。

「まあ、それまで、散々、私の世話になっていましたから。『そうかい、じゃあ、売ってあげるよ』と、渡鹿野島(三重県志摩市の島。昭和から平成にかけては売春島として知られた)を仕切る知り合いに電話してみました。しかし、この時(今から約30年前)は島に警察のガサが入っており、売春事業が衰退しはじめていたので、前借りで大金を出すようなお店がなくなっていたのです。

〈こいつは困った。サオリのたっての頼みをかなえられないな〉と思い、兄貴分の一人に相談してみました。すると『おれが面倒みている○○温泉をあたってみるよ』と、言ってくれました。

 数日後、この兄貴分が『ここがいいんじゃねえか。一応、店の女将にも話、通してるよ』と、お店の名前と電話番号が書かれた紙を持ってきてくれたのです。早速、店に電話して、女将に事情を話すと、快く受けてくれるというじゃありませんか。

 翌日、サオリを乗せて、○○温泉にある店に出向きました。金額の交渉はスムーズに運び、数日、サオリの働きぶりをみて、カネを振り込む段取りをつけた私は、サオリに最後の“サービス”をすることにしました」