(写真:ideyuu1244/イメージマート)
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ファイナンシャルプランナーの高山一恵氏のもとに寄せられた相談事例を通じてマネープランを考えていく連載「人生100年のマネー相談」。今回は、夫婦ともに給与収入850万円超のパワーカップルが見落としがちな所得控除について、相談事例をもとに解説します。

(高山 一恵:Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー)

(注:相談者のプライバシーに配慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください)

 今回、ご相談にやってきたのは、40代のパワーカップル。夫E男さんと妻A子さんは、それぞれベンチャー企業に勤務し、ともに年収は1000万円程度。小学生になるお子さん1人と3人家族です。

 年収の高い2人は、節税にご関心がありましたが、ご相談中に年末調整で申告し忘れていた控除があったことが判明しました。

2020年から導入された「所得金額調整控除」とは

 会社員の方は、毎年10月ごろになると会社で年末調整の書類が配布されます。年末調整の書類に記入する作業は面倒くさいと思っている方も多いと思いますが、年末調整は払う必要のない税金を取り戻すチャンスです。

 税金を取り戻すポイントは、年末調整で自分が適用になる「所得控除」を正確に申告することです。所得控除とは本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情だけでなく、保険商品等の個別の契約状況によって税の負担を軽くする制度のこと。代表的なものに「配偶者控除」「扶養控除」「生命保険料控除」などがあります。

 実は、今回のご相談者さんのように、夫婦ともに給与収入850万円超でお子さんが16歳未満の場合に見落としがちな控除があります。それは、2020年から導入された「所得金額調整控除」です。

 所得金額調整控除の正式名称は「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」といい、給与収入が850万円超で、以下のいずれかの要件に該当する人が対象となります

・23歳未満の扶養親族を有すること
・自身が特別障害者であること
・特別障害者である扶養親族または同一生計配偶者を有すること

※給与所得と年金所得がある場合、給与所得控除後の給与の金額と公的年金等にかかる雑所得の金額の合計額が10万円を超えると適用になりますが、こちらは、確定申告でのみ申告が可能です。

 所得金額調整控除は、2020年の法改正により、給与収入850万円超の給与所得者が増税となり、その増税となった部分を調整するために導入されました。