段階的廃止を要求する国々と拒絶する産油国の対立が極端化
トランプ政権が化石燃料振興策を進めるため、それに近い価値観を持つサウジ、ロシア、湾岸諸国、アフリカ産油国が米国の不在は自分たちの自由裁量の拡大を意味すると受け止めた。その結果、段階的廃止を要求する80カ国超とそれを拒絶する産油国という構図が極端化した。
トランプ現象は右派ポピュリズムを強化し、気候ナショナリズムを再浮上させた。独極右政党「ドイツのための選択肢」、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領、フランスの右派ナショナリスト政党「国民連合」の台頭と、中東・アフリカの資源ナショナリズム再強化だ。
右派ポピュリズムに共通するのは気候政策が国益を損なう国家外部からの干渉だというデタラメの主張。トランプ氏が世界中にまき散らしたナラティブである。COP30が真っ二つに割れた対立構図は世界的な右派ポピュリズムの延長線上にある。
しかし分断の理由はトランプ現象だけによるものではない。化石燃料をめぐる国益が真っ向からぶつかり合う構造要因、米中対立・ウクライナ戦争・グローバルサウスの台頭という地政学要因、世界的なインフレと欧米で財政余力がなくなるという経済的要因がある。