AIと人間の協業作業が成功のカギ

　私は経営者としても、こうした費用対効果を見極めながら、地域の安全をどう守るかという課題は非常に現実的だと感じています。

　AIの導入によって、クマを単に追い払う対象から共生を調整する存在として捉え直す流れも生まれています。

　AIでクマの通り道を把握し、そのルートを避けるように里道を整備することで、人とクマの接触機会を減らす取り組みです。

　農作物被害を防ぐために、AIが分析したデータをもとに果樹園や養蜂場の設置場所を再設計する動きも出ています。

　これにより、クマの生態を尊重しながら被害を減らす共生型AI対策が形になりつつあるのです。

　技術とは人を支配するものではなく、人を助けるための道具だと学びました。AIもまさに同じです。

　人間の知恵と技術を重ね合わせて初めて、自然と共に生きる新しいバランスが生まれます。

　AIが山林の監視を担い、人間がその情報をもとに判断する。この協働関係が、これからの里山保全のカギになるでしょう。

　今後5年ほどで、クマ被害対策の現場は大きく変わると思われます。

　自治体同士が連携した「AIクマ情報ネットワーク」が構築されるでしょう。出没情報がリアルタイムで共有され、隣接地域の警報や行動制限に反映されるようになります。