「AIインフラに兆単位の投資が必要」

「ここ数カ月、AIインフラに兆単位の投資が必要との議論をよく聞く。世界的にAIとデータセンターへの金融セクターの影響力は極めて強く、化石燃料と同じ構図だ。COP30は、AIと気候を議論する新たな機会であり、本当のイノベーションとは何かを問い直す場だ」(リー氏)

 ブラジルのデータセンター建設は水・土地・文化・人々の生活に犠牲を強いている。国家データセンター政策が策定され、企業誘致のため税優遇・迅速な認可・規制緩和が導入された。十分な環境影響評価も地域社会への説明も行われず、先住民の権利保護が事実上無視されている。

 TikTokの巨大AIデータセンター(ブラジル北東部セアラー州カウカイア)が先住民に無断で承認された。先住民はメディア報道で初めてプロジェクトを知り、当局に説明を求めが無視された。州政府は低影響プロジェクトに分類し、先住民の同意を回避した。

 AIブームの陰で“デジタル植民地主義”が急ピッチで広がる。約1兆ドルの株式報酬案(目標達成時の潜在価値)が定時株主総会で承認された米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏への批判も高まる。

 前出のスー氏は「マスク氏は世界で最も裕福な1%に属し、データセンター拡大を推進する層の象徴だ。ディーゼル発電機を使って自らのプロジェクトを動かしている。マスク氏はこの産業を推進しているのは誰なのかという問題を象徴している」と語る。

「ビッグテックが化石燃料企業と結びつき、生まれた子供がAIであり、データセンターが二つの産業を拡大させている。彼らは各国の政治家と組み、AI産業を外交レベルの巨大案件に押し上げている。こうした企業権力に対し私たち、そして地球全体が立ち向かう必要がある」

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。