第7部 ロシア産原油の新規代替市場/中国とインド

7-1. ロシア産原油 (ESPO原油) の新規拡大市場/中国:

 ロシア軍のウクライナ侵攻開始後、欧州向け露ウラル原油は輸出先を喪失。欧州市場の代替市場として浮上したのがインド。一方、中国向け主要ロシア産原油はウラル原油ではなく、良質のESPO原油です。

 中国の2015年から2025年9月までのロシア産原油輸入量推移は下記グラフの通りです。

 2022年2月のロシア軍のウクライナ侵略戦争開始後、中国はロシア産原油輸入量を拡大。2024年のロシア産原油輸入量は108.5百万トン(輸入シェア19.6%)、2025年1~9月度は74.0百万トン(同17.5%)になりました。
 

出所:中国通関統計より筆者作成
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出所:中国通関統計より筆者作成
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 ご参考までに、中国が輸入しているロシア産原油の輸入油価(CIF=Cost, Insurance, Freight)は上記グラフの通りです。
 
 中国はロシア産原油(ESPO原油)を①ESPOパイプライン(PL)と②極東コズミノ出荷基地から海上輸送による2系統で輸入しており、①は中露国境渡しCIF(商品代+保険料+運賃)油価、②は海上輸送CIF揚げ地油価になります。

 中国が輸入している露産原油はほぼ全量シベリア産ESPO原油(軽質・スウィート)です。ESPO原油は北海ブレントと同じ軽質・スウィート原油故、両油種は原則同じ油価水準になります。

 かつ、北海ブレントの建値はスポット(FOB)、中国が輸入しているESPO原油はCIF価格ゆえ、本来ならばCIF価格の方がスポット(FOB)価格より高くなるはずです。

 ところが、中国が輸入するESPO原油のCIF油価が北海ブレントのFOB油価よりも安い水準で推移していることは、取りも直さずESPO原油がバナナの叩き売り状態になっていることを意味します。

 時々、「中国は相場よりも高い価格でロシア産原油を輸入して、ロシアを財政支援している」と解説する評論家もいますが、間違いです。輸入するロシア産原油の種類は異なるので、油価水準も異なります。

7-2. ロシア産原油 (ウラル原油) の新規代替市場/インド:

 次に、インドが輸入しているロシア産原油輸入シェアを概観します。

 海上輸送によるウラル原油は、ウクライナ開戦前まではバルト海から主に欧州に輸出されていました。

 しかし、ウクライナ侵攻後、欧州は露産原油を輸入停止。欧州輸出市場を失ったウラル原油は暴落。北海ブレントとの値差は一時期最大バレル$42まで拡大。現在でも約$12前後の値差で推移しています。

 インド通関統計では現状2025年8月度まで発表されており、インドが輸入しているロシア産原油シェアは2022年3月以降急増。2023年以降は毎月3~4割のシェアで推移しています。

 米国の圧力を受けて今後インドのロシア産原油輸入量・輸入シェアがどのように変化するのか、後日検証可能になるでしょう。
 

出所:印度通関統計より筆者作成
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