第2部 2油種 (北海ブレント・露ウラル) 年次・月次油価動静(2011年~25年10月)
本稿では、2011年から2025年10月までの2油種年次・月次油価推移を概観します。
原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は現状存在せず、油価は下落傾向です。
ロシア軍によるウクライナ戦争開始前までの北海ブレントと露ウラル原油の値差はバレル$2前後でしたが、これは上述通り品質差に基づく正常値差でした。
下記グラフをご覧ください。
ウクライナ開戦前までは正常な値差範囲でしたが、2022年2月のロシア軍による開戦後は油価急落したこと、およびこの値差が大幅拡大したことが一目瞭然です。
油価(ウラル原油)下落は露財政を圧迫しており、2024年財政赤字は期首予算案比で倍増。$69.7だった2025年の予算案期首想定油価は、今年4月$56に下方修正、9月は$58に上方修正しました。
ロシア軍は2022年2月24日、ウクライナに全面侵攻開始。露ウラル原油は主要輸出先たる欧州市場を失い、同年6月には北海ブレントと露ウラル原油の値差は最大バレル$42にまで拡大。
今でも両原油の値差はバレル$12前後で推移しており、この値差拡大こそ欧米による対露経済制裁の効果となります。
時々、「対露経済制裁措置は効果ない」と解説している評論家もいますが、トンデモナイ間違いです。
このバナナの叩き売りとなった露ウラル原油に目をつけたのがインドの石油会社です。
インド国営石油ガス会社ONGCはサハリン-1(S-1)プロジェクトに20%権益参加しており、同プロジェクトで生産されるソーコル原油(軽質・スウィート原油)を輸入していました。
ところが、インドの民間石油会社は超安値となった露ウラル原油を2022年3月以降、輸入開始。今ではインドが輸入する原油の約3~4割がロシア産原油となりました(後述)。
インドの石油会社はロシアから超安値原油を輸入して、自社リファイナリー(石油精製工場)でガソリン留分・軽油・重油等を生産。
軽油(ディーゼル油)を国際市場価格で欧州市場に輸出しているのですから、儲からないはずはありません。文字通り、「濡れ手に粟」の状態です。
