第1部 2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~25年11月)
初めに、2021年1月から2025年11月までの代表的2油種週次油価推移を概観します。
北海ブレント(軽質・スウィート原油)はスポット価格、ロシア(露)の代表的油種ウラル原油(中質・サワー原油)は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB(本船渡し)油価にて、この2種は性状(品質)が異なります。
硫黄分含有量1%未満は「低硫黄原油」と総称されており、業界用語では「スウィート(甘い)原油」(硫黄分含有量0.5%以下)、「サワー(酸っぱい)原油」(同1%以上)という言い方もあります。
米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止。一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入しておりません。
油価は2021年初頭より2022年2月まで上昇基調でしたが、ロシア軍のウクライナ侵攻後、ウラル原油は下落開始。バルト海から出荷されるウラル原油の主要輸出先だった欧州向けは開戦後に激減。
輸出先を失ったウラル原油は暴落。北海ブレントとの値差はウクライナ侵攻直後、一時期最大バレル$42の値差となりました。
直近11月10~14日のウラル原油週次平均油価は$51.53/bbl(前週比▲$0.46、bblはバレルで1バレルは約158.9リットル)と続落。最近は値差$12前後の水準で推移していますが、この値差は拡大基調です。
両油種の品質差による正常値差はバレル$2程度ゆえ、依然としてウラル原油のバナナの叩き売り状態が続いていることになり、これこそ欧米による対露経済制裁措置の効果であり露国益の海外流出です。
財政赤字も大問題です。
現行油価水準(ウラル原油)は今年の期首予算案想定油価$69.7(4月$56/9月$58に修正)を下回っているので、今年のロシア財政赤字幅はさらなる拡大必至となりました(後述)。
この超安値ウラル原油を輸入し、自社で精製後石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、「濡れ手に粟」の状態がインドです。
一方、中国が輸入している露産原油は主にESPO原油にて、長期契約に基づき原油パイプライン(PL)で供給されています(一部は露極東コズミノ出荷基地から対中海上輸送)。
