うちは大企業だから小回りが利かない、の罠
経営者と話していると、よく聞く言葉があります。
うちは何万人も社員がいて、設備投資も絡むので、そんなスタートアップのようなスピードでは動けない、という嘆きです。
残念ながら、AI時代にこの前提を置いた瞬間、その企業の未来はかなり厳しくなります。AIの進化スピードがとにかく速いからです。
半年遅れればモデルの世代が1つ、2つ進んでいる。その間に競合は、既存のインフラを使って新しいビジネスモデルを市場に出してしまいます。
スピードが遅いから、その前提で勝てる領域を探そう、という発想は、インターネット以前の世界ならまだ成立していました。
ですが、AIは「無人の労働力」を提供する技術です。人海戦術や長い社内プロセスを前提にした強みは、真っ先に相殺されます。
ですから、本当にやるべきことは、AIを使う前に、自社の「意思決定と開発のスピード」を最優先課題として潰しにいくことです。
ルールや稟議フローがボトルネックなら、そこを変える。物理設備が重いなら、外部パートナーに任せてソフトウエア側の俊敏性を確保する。
若手を中心に、小さな子会社や社内スタートアップ的な組織を量産する。
ここだけの話ですが、こういう話をすると「それは本社の仕事で、自分の担当ではないんですよね」と言われることが少なくありません。
でも、歴史的に見て、次の時代の主役になった企業は、いつも現場からそういう「越権行為」をする人たちが出てきた会社です。
オブジェクト指向プログラミング言語の「Java」が日本に入ってきたときも、正規の予算枠なんてほとんどありませんでした。
みんな勝手に勉強して、勝手にプロトタイプを作ったのです。