逮捕された立花孝志容疑者(右)。写真は今年7月の参院選で街頭演説した際のもの。左は斉藤健一郎参院議員=神戸市中央区
昨年の兵庫県知事選の投開票から11月17日で1年。再選された斎藤元彦知事を応援する「2馬力選挙」を展開した政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が、元県議に対する名誉毀損容疑で9日に逮捕された。全国各地の選挙を“ハック”し、SNSで誹謗中傷や個人攻撃を繰り返してきた人物は何を問われたのか。被害者や弁護士はどう戦ったか。そして、斎藤知事は何を語ったのだろうか。(以下、文中敬称略)
(松本 創:ノンフィクションライター)
元県議の死後に「逮捕される予定だった」と発言
「立花孝志逮捕」の一報を受けて開かれたオンライン記者会見に外出先から参加した後、移動する電車の中でスマホが震えた。11月9日の夕方。つい30分前まで告訴人の立場で会見に出ていた故・竹内英明(元兵庫県議会議員)の妻からの着信だった。会見終了後に送ったねぎらいのメッセージに反応してくれたようだ。途中下車し、ホームの喧騒の中で数分話す。
「会見でお話したようにホッとした一方で、まだちょっと信じられない感じもあるんです。因縁めいた巡り合わせというか、いろんなことが起きたあの知事選から1年で、ようやくここまで……」
竹内は昨年11月の兵庫県知事選で候補者の一人だった立花から、知事の斎藤元彦に対する告発文書の「黒幕」と名指しされ、街頭演説やSNSで激しく攻撃された。デマと誹謗中傷が広がり、事務所にも嫌がらせの電話やメールが相次ぐと恐怖で外出できなくなり、斎藤が当選した翌日の18日に議員辞職した。
だが、立花や支持者の攻撃は止まず、むしろエスカレートしていった。竹内は鬱状態に陥り、辞職から2カ月後の今年1月18日、自宅で自ら命を絶った。
竹内英明元県議
今回、兵庫県警が名誉毀損容疑で逮捕した事案は二つある。いずれも知事選後のことだ。
一つは、竹内が存命だった昨年12月、立花が立候補していた泉大津市長選での街頭演説。「何も言わずに去っていった竹内県議はめっちゃやばいね。警察の取り調べを受けているのは、たぶん間違いない。複数の人から聞いていて……」などと発言した。