欧州の主要リーグ・大会をすべて見るのに必要な契約数

 もちろん、高額化が常に悪というわけではない。独占や寡占によって不当に利益を得ているというのでもない限り、企業として投資に見合うだけの価格・料金設定をするというのは当たり前の話だ。

 またライブ配信サービスの価格高騰については、良い面も指摘されている。

 たとえばその一因である放映権料の上昇は、スポーツリーグやクラブの活力に直結する。多くのプロスポーツにとって、放映権料は最大級の収入源だからだ。

 その上昇はリーグやクラブの収入増につながり、スタジアム整備、ユース育成、データ分析スタッフの雇用などに再投資される。その結果として、競技レベルの向上も期待できる。

 前述の「Jリーグと日本サッカー発展のために(料金の高騰は)仕方ない」というコメントは、決して間違っていないのだ。

 またインフラへの投資は、当然ながら配信画質や機能の向上につながる。実際に4K配信やマルチアングル、選手データ連動など、「TVではできなかった視聴体験」を提供する配信サービスが増えている。それにより、スポーツの新たな楽しみ方が生まれるかもしれない。

 グローバル展開という点でも、ライブ配信サービスが整備されるのは魅力的だ。

 世界中のどこからでも試合のオンライン視聴が可能になれば、これまで1つ、あるは少数の国や地域に制約されていたファンの獲得活動が、全世界を視野に入れることができるようになる。実際に海外リーグが世界ファン向けにマルチ言語配信に対応し、収益を広げようとする動きが見られている。

 一方で、やはり高額化にはマイナス面があることも否定できない。まずは「スポーツ視聴の細分化」という点だ。

 英国では、サッカーのプレミアリーグや欧州主要大会など「トップ15の大会・リーグ」をすべて視聴するために必要なサービス数が、過去5年で4つから10以上に増え、月額費用は89.23ポンド(約1万8000円)から140.21ポンド(約2万8500円)へと約6割増になった、という調査が報じられている

 その結果、すべての試合を追えるファンは1%程度しかおらず、同じサッカー好きでも契約しているサービスが違うことから、「観られる試合・観られない試合がファンごとに異なる」という視聴体験の分断が生じていると指摘されている。

 特に若年層での変化が顕著だ。