多額の繰り上げ返済で生活が苦しくなっては本末転倒

 ただし、500万円を余分に借りるにはリスクがあることも忘れてはならない。

 物件価格や年収などから、5000万円までしか借りられない場合があるだろうし、借りられたとしても、自己資金比率が低下することで、適用金利が高くなってしまう可能性もある。そうなると、かえって総返済額が増えてしまうケースも考えられる。あくまでも返済に余裕があることが大前提になる。

 そうした問題さえクリアできれば、完済までの総返済額で得できるだけではなく、繰り上げ返済するまでの間500万円を手元に置いておける安心感がある。住宅ローンの返済が始まった当初は何かと生活が厳しくなりがちだが、手元に現金があれば、生活にゆとりが持てるだろう。

 特に資金を利用する必要がなければ、500万円を運用すればお金を増やすこともできる。年利1%だと、3年後には約12万円、年利2%では約25万円、3%だと約37万円増える。しかも借入額が増えればローン控除額が多くなるメリットもある。

 とはいえ、住宅価格が下落したときには、自己資金が少ないと担保割れになる可能性が高くなるし、運用益には課税されることも頭に入れておきたい。

 いずれにしても、ローンの総返済額で大きなメリットが見込めるからと、無理やり繰り上げ返済するのはやめた方がいい。

 手元には半年分程度の生活費を残しておくのが無難だ。人生何が起こるか分からない。病気、ケガのほか、リストラや失業などで収入が減ったり、なくなったりするリスクがないとは言えない。そうした不測の事態に備えて、万一のことがあっても半年程度は貯蓄を取り崩して生活していけるようにしておきたいところだ。

 また、将来設計を明確にして、いつごろ、どれぐらいの資金が必要になり、その準備はできているかといったライフステージの変化も想定しておきたい。多額の繰り上げ返済をしたばかりに教育資金がなくなって、子どもたちの将来の希望を制限するような事態になっては本末転倒だ。

 夫婦、家族でよく話し合い、どんなローンを組んでどう返済していくのがベストなのかをしっかりと計画した上で、マイホーム購入を検討していただきたい。