米国に比べて極端に少ない日本企業の倒産
激しい痛みと引き換えに、更生手続きを終えた会社は「復活の翼」を手に入れる。経営を圧迫してきた巨額の債務から解放され、余剰人員や不稼働資産に起因する固定費も激減する。顧客とコア人材が逃げなれば、業績はかなりの確率でV字回復する。
2023年、米国では上場企業を含む642社の大型倒産があった。同年の日本の上場企業倒産はわずかに1社。米国や新興国に比べて日本の起業が少ないことはよく知られているが、大企業の倒産もまた、日本は極端に少ないのだ。起業を「会社の生」、倒産を「会社の死」と定義すれば、米国などは猛烈に会社が生まれ猛烈に死ぬ「多産多死」、日本は「少産少死」と言える。
便宜上「会社の死」と書いたが、実際には倒産しても会社は死なない。一旦死んで経営陣、従業員、債権者、株主、取引先といったステークホルダーが痛みを分かち合う。それで身軽になった会社は蘇る。だから会社「更生」法なのであり、民事「再生」法なのだ。倒産法の目的は会社を殺すことではなく、更生させ再生させることにある。
米国は独立宣言から間もない1800年に倒産法を制定し、「債務者の再出発の促進」を謳った。米国が「優しい社会」だからではない。建国期の米国に就職先などない。新世界にやってくれば誰もが起業家だ。その多くが「失敗」する。失敗した人の身ぐるみを剥いで「敗北者」の烙印を押すより、債務を減免して「やり直し」の機会を与えた方が、社会全体の富が増えることを彼らは経験から学んだのだ。
西海岸のベンチャー・キャピタルの間では「会社を3度倒産させて一人前の起業家」と言われる。1度や2度の失敗でへこたれるようではガッツが足らないし、3度も失敗を経験していれば「もうヘマはしないだろう」と投資家たちは考える。