投資家心理を無視すれば「売り」
一部の投資家は、テックセクターの果てしない相場高騰を取り残される恐怖感に駆られた無差別な個人投資家のせいにする。多くの場合、機関投資家にも同じくらい罪があるにもかかわらず、だ。
「投資家心理の要因を無視すれば、我々のモデルは『売り』と叫んでいる」
投資ポートフォリオに約150社の米国株を保有している米レイリアント・グローバル・アドバイザーズの創業者兼会長のジェイソン・シュー氏はこう話す。
大半のトレーダーは危険なAI投資バブルの話題を早計だとして一蹴し、ドットコム時代とは異なり、今の株式市場の寵児は巨額の投資計画を支える強固なバランスシートを持っていると主張する。
米連邦準備理事会(FRB)が10月末に今年2度目の利下げに踏み切った後、ジェイ・パウエル議長は強気派の応援に駆け付けた。「(今日)これほどバリュエーションが高い企業は実際に利益を出している」と語った。
懐疑派は即座に、強い財務にもかかわらず2000年前後に株価が急落したドットコム時代の企業数社を引き合いに出した。
「シスコシステムズは1999年に利益を上げ、ビジネスモデルを持っていた。同社株はその後、90%下落した」とジョーンズ・トレーディングのマイク・オルーク氏は言う。
「人気が高い製品は必ずしも良いビジネスを保証しない。ヤフーとAOLも人気だった」
金融大手バークレイズのアナリストらは9月のクライアント向けメモで、25年前のインフラ構築後に急落した多額の借り入れを抱えた通信会社と今日自社の投資を自ら賄っているAI企業とを区別した。
デット市場の活用に要注意
だが、その区別はすでに崩れ始めている。
10月30日、本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はメタが急増するAI費用を賄うために社債発行で250億ドル調達する計画だと報じた。
オラクルは9月、オープンAIにコンピューティングパワーを提供するためにリースしたデータセンターの建設費用を負担するために180億ドルの社債を発行した。
野村のストラテジスト、チャーリー・マケリゴット氏は「AIの開発がすべて自己資金で賄われた快適なフェーズは終わりを迎えようとしている」と言い、大手テック企業が過度に積極的にデット(負債)市場を利用したら、AIの「高揚感」がすぐに「懐疑論」に転じる可能性があると指摘した。
しかし、今のところは「人々はダウンサイドリスクを心配しておらず、相場高騰に乗り遅れることを心配している」と語った。