AI楽観論が蔓延するウォール街

 ウォール街では、AI楽観論が隅々に行き渡っている。

 特筆に値するAI相場の特徴は、競合他社がいずれ誕生し、既存企業の市場シェアに食い込んでいく見込みにもかかわらず、最大手の銘柄が遠い未来まで前代未聞の量の現金を着実に生み出すことに高い企業バリュエーションがかかっていることだ。

「こうしたトップ企業が何年も市場を支配し続けていく世界が存在する」とカミンスキ氏は言う。

 実際、運用大手バンガードのエコノミスト、キアン・ワン氏によると、一部の投資家はAIが地球を揺るがすほど革命的なものにはならない可能性を軽視しているようだ。

「市場は往々にして先走る」と同氏は話す。「未来への高い期待でバリュエーションが無理に高くなっている時には、ダウンサイドのリスクがアップサイドの可能性を上回る」と警告した。

 米国株はほぼどんな尺度で測っても極端な水準で売買されており、その原因はほぼ全面的にAI企業にある。

 S&P500の景気循環調整後のPER(株価収益率、10年間のインフレ調整後利益の平均に対する株価の倍率)は過去25年間で最も高い水準にある。

 市場のPSR(株価売上高倍率、投資家が売上高1ドルに対して払うお金)は1999年のドットコムバブルの最中につけた水準を上回っている。

 1970年以降、米国の上場企業の株式時価総額は平均で米国の国内総生産(GDP)の約85%に相当した。

 著名投資家のウォーレン・バフェット氏はかつて、これを「恐らくはバリュエーションの水準の唯一最高の指標」と描写していた。相場が高騰した10月28日、この指標は過去最高の225%に達した。