西本宮からお参りし、川を渡って東本宮へ

天岩戸神社 西本宮拝殿 写真/kent/イメージマート

 この神社には西本宮と東本宮があるが、まずは西本宮からお参りするのがよい。鳥居の手前にあるアマテラスオオミカミ像にご挨拶、鳥居をくぐって左に行くと英雄タヂカラオノミコトの像もある。御祭神はオオヒルメノミコト。これはアマテラスオミカミの別名である。立派な拝殿はあるが本殿はない。川の向こう岸の洞窟、すなわち天岩戸そのものが御神体だからだ。拝殿の裏手に遥拝所があり、神職の方のご案内があれば、そこから天岩戸を拝むことができる。しかし写真撮影は禁じられているので、心の中にだけとどめておこう。

 遥拝を済ませたら境内奥の鳥居からいったん外に出る。一般道を少し歩き、いくつかの商店が並ぶ先の遊歩道を進むと渓流沿いに出る。川には太鼓橋がかかり、世にも神々しい風景だ。目には見えないが、何らかの霊気に満ちていることがひしひしと感じられる。

天岩戸神社 岩戸川 写真/Spuyan/イメージマート

 さらに歩くと河原が開け、仰慕ヶ窟(ぎょうぼがいわや)と呼ばれる巨大な岩窟がある。その下にある鳥居に光が射す光景に思わずひれ伏しそうになる。ここがあの天安河原、神々が集まって岩戸開きの相談をしたとされる場所なのだ。人間の身でありながら神の領域に入らせていただけるなんて、なんとありがたいことだ。

 奥には小さな社があり、岩戸開きの際に計画を立てた知恵の神オモイカネノミコトと八百万の神が祀られている。河原には訪れた人々が積み上げた石がたくさん並んでいる。仏教的な場所であれば亡き子の魂を慰めるための塚であることが多いが、ここでは願い事を込めて石を積み、神様に叶えていただくという意味を持つようだ。

 引き続き、川を渡って東本宮へ。ここは岩戸からお出ましになったアマテラスオオミカミが最初に鎮座した場所と伝わり、御祭神はもちろんアマテラスオオミカミである。鳥居の脇にアメノウヅメノミコト像があり、古事記の記述通り、裏返した樽の上に乗って踊っている。拝殿の奥に本殿。その裏手にある御神木の下に御神水が湧き、そこから遊歩道が続いている。しかし周辺のそれ以外の場所は禁足地となっており、この先に西本宮からお参りした御神体の天岩戸もある。

 高千穂エリアではいくつもの神社や集会場などで夜神楽が行われることは前回の記事にも書いたが、ここ、天岩戸神社にも無形文化財「天岩戸神楽」が伝わっている。三十三番の演目を十六時間かけて舞う壮大なもので、毎年11月初旬に行われる。今年(2025年)は11月2日に西本宮の斎館で開催され、高千穂の夜神楽シーズンのスタートを切った。春・秋の大祭などにも神楽が奉納されるので、可能であれば、その時期を狙ってお参りに行きたい。