石原元都知事も傾注していたスカイライナーの「東京駅発着」
京成は成田空港への輸送が生命線となっているため、成田空港へのさらなる輸送改善を図るべく、中期経営計画で2028年度内にスカイライナーの新型車両を導入する計画を発表した。さらに成田空港と羽田空港を都営浅草線経由で結ぶ特急列車の運行も模索している。
前述したように、京成には押上線と呼ばれる支線がある。同線は本線の青砥駅から分岐して押上駅まで走るが、その先は都営地下鉄浅草線に乗り入れて泉岳寺駅まで走る。さらに泉岳寺駅からは京急線にも乗り入れる列車がある。かなり複雑な乗り入れ体制だが、これによって成田と羽田は線路一本でつながっている。
都営浅草線は地下鉄のため、火災などを想定して先頭部から車両外へと脱出できるような車両構造が求められる。現行スカイライナー(2代目AE形)は浅草線への直通を前提としておらず、非常用の前面貫通扉も備えていない。
また、都営浅草線には追い越し設備や待避線が設けられていないので、特急を走らせてもメリットを最大限に生かせない。そうした設備面が考慮されて2代目AE形が都営浅草線と乗り入れることはなかった。
京成と浅草線の相互乗り入れは最終的に東京“駅”へのアクセスを向上させることを目的にしていた。そうした意図をくみ取れば、車両も地下鉄の規格に準じた設計になると推測できる。しかし、都営浅草線は東京駅に乗り入れていない。どういうことなのか?
京成が東京都心部への進出を目指した歴史は古く、1960年に開業した都営浅草線と直通運転を開始したのもその一環だが、2000年代には政府や東京都も巻き込んだ本格的な議論へと発展していく。
その過程で、浅草線の宝町駅付近で線路を分岐させて、東京駅の地下に直結させるという計画が浮上した。仮に同計画が実現すれば、東京駅から乗り換えなしで成田空港へ直通する特急が走ることになる。
東京駅直通の特急運行は乗り換えがなくなるという手間を省くと同時に、所要時間も大幅に短縮できる。同計画は成田へのアクセスを改善することによって、国際都市・東京の発展を加速できると期待した政府や東京都が乗り気になっていた。
都知事だった石原慎太郎氏(当時)は、竹下登内閣で運輸大臣として成田空港のアクセス改善に傾注していた過去がある。スカイライナーを東京駅から発着させることは、石原都知事の悲願だったのかもしれない。
しかし、同計画の実現にはクリアしなければならない障壁がいくつかあり、その後の議論では東京駅への乗り入れではなく、羽田・成田の連絡輸送を強化する方針へと変更された。
羽田空港が拡張した際に「成田空港不要論」も出たが、近年の成田空港は国際線需要の高まりを受けて発着枠を増加させるなど、その存在感は増している。円安が進んだことや若者の海外旅行離れなども重なり、海外へ飛び立つ日本人は少なくなったとも言われるが、実際の出国者数は増加傾向にある。今後は貨物需要の伸びも期待されている。
空港利用者を支えるアクセス鉄道の整備は日本経済・産業の成長戦略にも影響を与えるだけに、今後もさらなる利便性の向上が求められる。京成が計画する「新型スカイライナー」「新型特急」で成田空港はもっと近くなるか?




