
埼玉県川口市の玄関駅でもある川口駅は、朝のラッシュ時間帯は通勤・通学客で大混雑する。川口駅は、大宮駅方面へと向かう北行と東京駅方面へ向かう南行が同じホームを共用する1面2線構造。京浜東北線しか停車しないが、電車を待つ多くの乗客であふれ、朝のラッシュ時は危険な状態となり、その横を東北本線(宇都宮線)や高崎線が走り抜けていく。
川口市は混雑緩和策として、かねてよりJR東日本に上野東京ラインの川口駅停車を要望してきたが、このほど、その要望が受け入れられることになり、早ければ2037年度に実現する。上野東京ラインが川口駅に停車することにより、どんな変化が生まれるのか? フリーランスライターの小川裕夫氏が予測する。(JBpress編集部)
湘南新宿ラインの運行で長大な鉄道ネットワークが完成
昨今、物価が高騰しているが、それまでは長いデフレ下にあったにもかかわらず住宅価格は右肩上がりを続け、都内には2億円を超える新築マンションも登場して話題を集めた。そうした情勢から、庶民でも手が届く郊外に住居を求める動きが強くなっている。
川口市は埼玉県最南部に位置しているが、東京都と接している地理的優位性もあり、東京23区に通勤する若い共働き世帯などに人気となり、ベッドタウンとして発展した。
川口市には京浜東北線・東北本線(宇都宮線)・高崎線・武蔵野線といったJR各線のほか、東京メトロ南北線に乗り入れる埼玉高速鉄道が走っている。多くの路線が走っているものの、市の玄関口ともいえる川口駅には京浜東北線しか停車しない。東北本線や高崎線の列車はホームの脇をすり抜けるように走っている。武蔵野線や埼玉高速鉄道には、そもそも川口駅がない。
東北本線や高崎線は長らく上野駅発着だったが、2001年に山手貨物線を旅客転用する形で湘南新宿ラインが運行を開始。上野駅を経由せずに池袋駅・新宿駅・渋谷駅といった山手線の西側の駅に乗り換えなしでアクセスできるため、運行開始当初から人気となった。
それは埼玉県の川口市やさいたま市、蓮田市、上尾市といった沿線の宅地化を促すことにもつながる。特に、その恩恵を受けた白岡町は、新たなファミリー世帯が流入して人口が増加。2012年には単独市制を施行して白岡市になっている。
もともと池袋駅・新宿駅・渋谷駅といった山手線西側の主要駅と埼玉県を結ぶ役割は埼京線が果たしてきた。湘南新宿ラインはそれを補完しつつ、新しい動線として誕生したという経緯がある。
湘南新宿ラインが運行を開始したことによって、東北本線と高崎線は東海道本線と横須賀線とも相互乗り入れを開始。こうして群馬県・栃木県から埼玉県・東京都・神奈川県を経て静岡県までカバーする長大な鉄道ネットワークが完成した。