広電の広島駅。これまで乗り場が地上にあったが、JR広島駅の高架工事完了に伴い駅ビル2階へと乗り入れる(2024年3月、筆者撮影)
通勤・通学の足として重宝されている「広電」
約117万5000人の人口を擁する広島県広島市は、中国地方屈指の大都市として発展してきた。その玄関口となっている広島駅は、山陽新幹線や山陽本線・呉線・芸備線の列車などが発着する交通の要衝となっているが、繁華街は駅から少し離れた紙屋町・八丁堀エリアに形成されている。
繁華街エリアへの足として、長らく親しまれてきたのが広島電鉄(広電)だ。広電は鉄道線と軌道線で約35.1kmの路線ネットワークを有する。軌道線とは平たく言えば路面電車のことを指すが、広電の路面電車は鉄道線にも乗り入れる。
路面電車と聞くと、昭和期に各地で運行され衰退した市電(チンチン電車)をイメージするかもしれない。しかし、広電は以前から5車体という長編成で運行され、1編成あたりの定員は153名。運行本数も多く、ラッシュ時は次から次へと電車が発着するので、通勤・通学の足としても重宝されている。
レトロな車両も走っているが、最新鋭の車両を積極的に導入しているので、振動・騒音なども少なく移動手段としての快適性も十分に確保されている。
JR西日本の227系のラッピング車両で走行する広島電鉄の路面電車(2024年9月、写真:共同通信社)
そうした利便性を向上させるための取り組みを続けてきた成果もあり、広電の利用者は1日平均で約12万5000人。この数字からも、広電が市民に欠かせない公共交通手段になっていることがうかがえる。市民の日常生活を支えるだけではない。国内外から観光客が多く訪れる原爆ドームや安芸の宮島といった世界遺産へのアクセスも担っている。
広島において広電の存在感は大きいが、近年は人口増加が頭打ちとなっていることから、観光客や来街者の呼び込みが利用者創出の課題になっていた。