川口駅の入場制限によって高まっていた利用者の不満

 一方、川口市は2011年に鳩ヶ谷市を編入合併。それ以前から人口は増加を続けていたが、鳩ヶ谷市を編入したことによって都市化が加速した。そして、現在は約60万7000人の人口を誇るまでになった。

 川口市の人口増をけん引したのは、かつての地場産業だった鋳物工場の跡地だ。高度経済成長とともに川口経済を支えた鋳物工場は郊外へと移転し、広大な跡地は平成半ばから大規模なマンション群へと姿を変えていく。建ち並ぶタワーマンションにはファミリー層が転入し、それが川口市の人口増へと結びついた。

川口駅西口のロータリーから西側を眺めると、高層マンションが林立している光景が広がる(筆者撮影)

 人口増は川口市にとって喜ばしい話だが、他方で新たな問題も引き起こした。それが朝のラッシュ時間帯における川口駅の混雑だった。京浜東北線で遅延が発生すると駅構内に人があふれてしまい、過度な混雑が事故の連鎖を引き起こすため、川口駅では入場を制限する措置が取られるようになった。

 だが、入場制限が頻発したことで駅の利用者から不満が高まり、市当局も混雑対策に乗り出すことになる。その手段として打ち出されたのが、湘南新宿ラインの川口駅停車だった。

 川口市は、京浜東北線が遅延や運転を停止した際には埼玉高速鉄道の川口元郷駅を利用するように呼びかけているが、川口駅と同駅は約1.2kmも離れている。歩けないほどではないが、代替手段として利用するにはためらいが生じる距離感ではある。

 そんな中、上野東京ラインが2015年に運行を開始すると、川口市はそれまで働きかけてきた湘南新宿ラインの停車を“中距離電車の停車”と変更した。この要望の変更は、「湘南新宿ラインと上野東京ラインのどちらも停車させたい」という川口市の意図が込められている。

 そして、このほど要望の一部が受け入れられて上野東京ラインが川口駅に停車することが決まった。湘南新宿ラインの停車こそ実現しなかったが、現行ダイヤでは湘南新宿ラインよりも上野東京ラインの運転本数のほうが多い。それを考慮すれば、上野東京ラインの停車は満額回答とは言えないまでも御の字といったところだろう。