高級イチゴ「スカイベリー」は、中国企業によって商標登録

 イチゴの人気品種「紅ほっぺ」の中国での栽培面積も18〜19年で4万4000ヘクタールと、日本におけるイチゴすべての栽培面積の8倍強となった。同じイチゴの「スカイベリー」は、栃木県が決めた中国名である「天空草苺」や「SKYBERRY」という名称まで、同県と関係のない中国企業によって中国で商標登録された。

高級イチゴの「スカイベリー」は中国で商標登録までされた(写真:共同通信社)

 今回、農水省内でシャインマスカットの海外ライセンス生産の話が持ち上がったのは、適切な契約に基づく生産が「日本のシャインマスカットの正当性を主張する一つの手段」(小泉進次郎農相、当時)になり得ると考えたからだ。

 これに対し産地は反発した。

 山梨県の長崎幸太郎知事は9月25日に小泉農相と面会。衆議院議員会館の記者会見で長崎知事はライセンス展開による海外生産は輸出環境を整えた後に検討すべきだと述べた。海外からの輸入が始まる国が増える一方で、「私が知事になって6年間、少なくとも1カ国も(輸出できる)新しいマーケットは開けていない。輸出ができない中で、パイ(市場)が奪われてしまうような状態を(政府が)作ることはやめてほしい」と訴えた。

【参考】
山梨県の知事臨時記者会見

 小泉農相は翌26日の会見で、「ライセンスについては産地、また知事の理解なしで前に進めることはない」と慎重意見に配慮する姿勢を見せた。

 国内では数多くの農産物品種が開発されている。しかし、長い間、それを知的財産と考える生産者や農業関係者は少なかった。

 政府は15年にまとめた農業分野の知的財産戦略で「生産現場は知的財産の保護に無防備で、活用について無関心な状態にある」と指摘した。海外流出を防ぐ狙いで種苗法が改正されたのは20年12月だ。