クマ被害の拡大で深刻なハンター不足が浮き彫りに。写真はイメージ(写真:Jordi Mora/Shutterstock.com)
クマによる人的被害が過去最悪のペースで続くなか、政府は関係閣僚会議を開き、抜本的な対策を急ぐ構えを見せています。そこで急浮上してきたのがガバメントハンター、つまり公務員ハンターです。現在のクマ駆除は地元猟友会のハンターに委託するケースがほとんどですが、猟友会のメンバーたちは高齢化が進み、各地でハンター不足は深刻です。それを補うための存在がガバメントハンターとされていますが、実際はどんな役割を担うのでしょうか。「ガバメントハンター」をやさしく解説します。
クマ被害拡大で「ガバメントハンター」が切り札として急浮上
「ガバメントハンター」という語句が一気に広がったのは、10月30日に首相官邸で開かれた「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」でのことです。石原宏高・環境大臣が対策の1つとして、2025年度補正予算を利用したガバメントハンターの早期育成を掲げ、これを各メディアが相次いで報じたためです。
国民民主党は、関係閣僚会議に先立って木原稔・官房長官にクマ対策に関する7項目の緊急要望書を提出。そのなかで「自治体職員等ガバメントハンターを含む捕獲技術者・専門職員の確保・育成を支援する」ことを強く求めました。
環境省によると、2025年度のクマによる死者は10月末現在で12人。1年間の記録として過去最悪だった2023年度の死者6人を大きく上回っています。クマの目撃情報についても同様で、8月末までに全国で1万6000件を突破。1年間の数字で過去最多だった2023年度の約2万4000件を大きく上回るペースが続いています。目撃地点も市中心部や住宅街に広がり、人々の不安は高まる一方です。
そうしたクマ被害の拡大に伴って鮮明になってきたのが、ハンター不足という現実です。
環境省の直近データによると、狩猟免許の取得者は2020年に全国で21万8000人となっています。1975年の51万7000人と比較すると、6割程度も減っていますが、2012年に18万1000人で底を突いたあとは増加傾向にあります。
その一方、高齢化の波は隠せません。若い20代の取得者は2006年の2100人から上昇に転じ、直近では1万人目前となっていますが、全体的な高齢化には歯止めがかかっておらず、60歳以上は12万7000人で全体のおよそ6割を占めています。クマの出没地域はそもそも高齢化が進んでいる地方都市が多く、実働可能なハンターの年齢層は全国統計の年齢分布よりもさらに高くなっているとみられます。
また、狩猟免許を持っていれば、誰でも猟に参加できるわけではありません。
猟期の前に、猟をする都道府県に狩猟者登録を行う必要があります。登録には手数料、狩猟税のほか、3000万円以上の損害賠償能力があることを示す被保険者・被共済者の証明なども必須です。
そのため、手続きを経て狩猟者登録を済ませても、ビギナーにとってはハンターの知人などがいない限り、実際に山へ入って経験を積むのは至難の業。そうしたことから、免許を取っても狩猟者登録をしない「ペーパーハンター」が相当数いるとされています。
こうしたハンターの人材不足という状況を踏まえ、安定した身分でクマ対策に従事してもらおうというのが、「ガバメントハンターの確保・育成」という考え方です。