カギを握る猟友会との連携

 ガバメントハンターは、クマ対策の決め手になるのでしょうか。

 ガバメントハンターの確保・育成といっても、クマ駆除に必要な狩猟用ライフル銃の所持許可には原則、最初に散弾銃の所持許可を得てから10年以上が必要です。ライフルの銃弾は1発で大型獣のクマを絶命させる威力を持っているため、所持するには相応の経験と銃に関する知識・技術が必要とされるのです。

 それでも、クマ被害が深刻さを増す県や自治体では、「ガバメントハンターの確保・育成」を図ろうという動きが活発になってきました。政府の関係閣僚会議による方針も受け、群馬県では山本一太知事が「野生動物の被害は深刻。知事が率先して狩猟免許をとり、免許取得の機運を高めたい。クマを駆除できる知事を目指したい」と表明。自ら知事ハンターとなり、ガバメントハンター育成の先頭に立ちたいとの姿勢も見せています。

 ただし、いくらガバメントハンターを増やしたとしても、猟友会との協力関係は今後も絶対に欠かせないでしょう。駆除に失敗し、「手負いのクマ」になったり、行方を見失ったりすれば、危険度は何倍にも増加します。

 クマの駆除はガバメントハンターだけで完結するものではないのです。とくに住宅地で駆除を行う場合、周囲の安全確保や確実にクマを仕留める必要性などから、クマの習性に熟知した複数のハンターが欠かせません。猟友会の協力がなければ、ガバメントハンターの役割も十分に発揮できないのです。

 ガバメントハンターを有効に機能させるには、ハンター全体の底上げが欠かせません。野生動物や自然環境に関する学習や、狩猟技術向上のための講習などの機会を増やし、若い世代がこの世界に入りやすくする施策も必要。そして何より、「安すぎる」と言われる手当を引き上げるなど、現在活動中の猟友会ハンターたちに十分報いる制度を整えなければ、どんな対策も実を結ばないでしょう。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。