全国で導入が進む「地方公務員ハンター」
ガバメントハンターとは、地方公務員の身分を持つハンターのことです。狩猟免許取得者を公務員として採用するか、採用済みの公務員に狩猟免許を取得させるか、主にどちらかの方法で人材を確保していくことになります。
日本にはいくつかの先行例があります。
皮切りは長野県小諸市で、2011年度からガバメントハンターの仕組みを導入しました。2013年度の日本哺乳類学会・日本霊長類学会合同大会で小諸市農林課が発表した内容によると、同市では2007年に95人いた猟友会メンバーがその5年後には57人にまで減少。年齢の中央値も65歳となり、ハンターの減少・高齢化が大問題となっていました。
このため、猟友会の負担を減らしつつ、農作物や人的被害を最小化させる「新たな野生鳥獣問題対策」を構じることにしたのです。
新施策のスタートに際し、小諸市は、野生動物問題を専門職とするガバメントハンター(鳥獣専門員)を地方上級公務員として正規雇用しました。同時に、採用済みの行政職員に狩猟免許を取得させてガバメントハンターとする方針を策定。その職員をリーダーとする有害鳥獣対策実施隊を結成し、猟友会の負担を減らしながら有害鳥獣の駆除などを行ってきました。
現在も小諸市農林課には、入職後に免許を取得した職員がガバメントハンターとして在籍しています。狩猟免許のキャリアは10年で、自身も地元猟友会のメンバー。普段からシカやイノシシの捕獲、動物のモニタリング、地元ハンターたちとの情報交換などを続けています。
図表:ガバメントハンターの長所(フロントラインプレス作成)
同様のガバメントハンターは、ほかの地域にもいます。リゾート地・トマムを抱える北海道占冠村の農林課林業振興室で働くのは、40代のハンター。もともとは地域おこし協力隊員として占冠村にやってきて、その後、正職員となりました。現在は「野生鳥獣専門員」という村独自の肩書で活動し、必要に応じてクマの駆除も手掛けています。
占冠村には2025年度、新たに酪農学園大学大学院を卒業したばかりの男性も、地域おこし協力隊員として着任。「野生鳥獣専門員」を補佐する「調査員」として業務に携わっています。
同じ北海道の岩見沢市や三笠市、本州の自治体などでもガバメントハンターの活動実績があります。ただ、多くは「地域おこし協力隊」事業の一環で現地へ赴き、それぞれの自治体で任期付きの会計年度任用職員として働くパターンです。正規雇用の公務員としてハンターを雇い入れるケースはまだまだ少ないのが実態です。