今年は史上空前のクマ被害が起きている。10月末の時点で18の道府県で被害者が180人、死傷者が5人も出ているが、襲われた場所が過去とは大きく異なっているのだ。秋田県では過去にタケノコ(正確にはひめたけという笹)採りで山に入った方が襲われて死亡する事件が頻発していたり、山菜採りやキノコ採りで山に入って襲われる事例が圧倒的に多かった。そこはクマが出没する地域であることを知りながら夢中になってタケノコを採っていて襲われたのだ。
今回のクマの被害が過去とは異なるのはクマの出そうな場所で襲われたのではなく、民家の周囲で襲われた例が多いことであり、早急な駆除が必要である。指定管理鳥獣として駆除に交付金を国は出すべきであろう。
山中でクマと遭遇しないために
筆者は渓流釣りが趣味であり、何十年もの間シーズンになると全国各地の渓流で竿を出していた。中でも北東北の秋田・岩手・青森での釣行が多いが、そこはクマの出没地域でもある。とくに岩手と秋田の県北の県境と青森の県境が重なるトライアングル地帯はクマの巣と目されている。当然のことながら、その付近に近づくときにはクマとの遭遇については充分に注意をしていた。
北海道への釣行が少なかったのは北海道に生息するヒグマと出遭ってしまったら到底敵わないと思っていたからだ。一方で、本州に生息するツキノワグマであればなんとか逃げられるのでは…という安易な考えを持っていたのだが、これがとんでもない間違いであることを後日、取材で痛感することになる。
渓流釣りのシーズンというのは地方によって日にちは多少異なるが、大体3月から9月末になっている。3月、4月の北東北はまだまだ降雪があったり残雪があったりで、山の雪が溶けて渓流に流れ込む雪代(ゆきしろ)によって水温が低下し、サカナの活性化が削がれるので釣りにはならない。だから筆者がもっぱら渓流に出かけるのは5月の連休明けであった。ちょうどこの時期は冬眠から目覚めたクマが、生まれたばかりの子グマと共に空腹を満たすためにエサを探して歩き回るので、人間との接触が多くなる。