習近平vs軍制服組?

 特に、以前に一度失脚の噂が流れた董軍が中央軍事委員会入りできるのか、という点が気になるところだ。

 今回失脚した軍高官たちは南京軍区出身、あるいは福建省第31集団軍出身者が多く、習近平の台湾侵攻計画を遂行するために抜擢された、と言われている。海軍出身の董軍も、台湾侵攻計画に参与するメンバーと言われており、その彼が失脚せずに、今回、中央軍事委員会入りを果たしたとなれば、習近平の台湾侵攻意欲はまだ衰えていない、とみることができるだろう。

 董軍は2023年12月、現役国防部長の李尚福の失脚により、国防部長を引き継いだ。だがいまだに中央軍事委員会入りできていない。彼が国防部長に抜擢されたのに、中央軍事委員会に入れない理由については、やはり董軍にも何か、まだ失脚する可能性の疑惑が残っているという見方がある。

 また中央軍事委員会メンバーの人数についても注目だ。

 習近平は第19回党大会で、中央軍事委員会メンバーをそれまでの11人から習近平を含む7人に減らし、中央軍事委員会主席たる習近平により忠実な側近メンバーを抜擢。目的は軍の意思決定力を習近平に集中し、シビリアン(文民)の習近平の決定や命令が、軍制服組に干渉されにくくするためだ。

 その数を減らした中央軍事委員会制服組の6人のうち現在3人が失脚したまま欠員状況になっている。現在残る中央軍事委員会の制服メンバーは副主席の張又侠(制服組トップ)、劉振立(連合参謀部参謀長)、張昇民(中央軍事委員会規律検査委員会書記)だ。

 それに新たに3人の委員が補充されて中央軍事委員会7人態勢が維持されるのか。さらに定数が減るのか。もし定数が減るとなれば、習近平の指示、命令がよりダイレクトに解放軍を動かすことになる。

 今回、党籍軍籍はく奪処分が発表された中で、武装警察司令だった王春寧の失脚は9月12日の全人代代表権はく奪の発表により一足早く判明していた。王春寧、張林(中央軍事委員会後勤保障部長)、高大光(中央軍事委員会聯勤保障部隊政治委員)、ロケット軍規律委員会書記の汪志斌の4人の軍の人民代表が一気に失脚している。

 王春寧は昨年末から重要な会議の場で姿を見せておらず、失脚説がでていた。王春寧ほか3人の中将も、いわゆる習近平人事の軍人たちだ。これに伴い党中央委員の大量入れ替えも起きるが、それも2017年以来の規模とみられる。