「エコシステム全体をアメリカが支えていた」
スレシンジャー:たとえば、アメリカが世界食糧計画(WFP)に多額の拠出をしてきたことで、遠隔地の難民キャンプなどに各国の支援者を輸送する国連人道航空サービス(UNHAS)も運用できていましたが、アメリカの援助削減によって、アフガニスタンや南スーダンで輸送サービスが削減されたこと。最貧国の政府職員や物資の保管倉庫などもアメリカが支援してきたことで、日本を含む各国の援助団体の負担が軽減されていたことなど、開発エコシステム全体をアメリカが支えていたことの意義を初めて知りました。
これがあったことで、たとえば日本のODAも使っている金額以上のインパクトを与えることができていたのです。
アメリカの援助がなくなった穴を一国で埋められる国はありませんが、世界から信頼されている日本にできることはあります。たとえば、人道援助に必要なデータ収集とUNHASのような輸送支援などの分野で日本が役割を拡大できる部分はあると私は信じています。
アメリカが支援を縮小する中、日本がリーダーシップを発揮して大きな役割を果たせば、ほんの少しの拡大でも大きな存在感を示すことができるチャンスでもあると思っています。かつてアメリカが環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱した時に日本が協定を救ったように、まとめ役として、あるいは仲介役として日本にできることはたくさんあるのです。
世界のODAの約25%を担っていたアメリカの撤退は多方面に影響を与えている(写真提供:ピースウィンズ・ジャパン)