「宿一軒が大きな図書館のよう」

 中学生の息子を持つ都内在住の40代のワーキングマザーは、自宅からドアツードアで1時間ほどの神奈川・箱根温泉に家族でよく出かけている。以前はニューオープンで雰囲気の良さそうな宿を物色していたが、数年前に本をテーマにした宿に出合い、以降、時折リピートするようになった。

「宿一軒が大きな図書館のようで、文学少女だった自分には懐かしく安心できる場所。客室にも著名人による選書のコーナーがあって、気になった本は購入して持ち帰っている」

 本だけでなく、地元の食材をふんだんに使ったイタリアンの夕食や、大浴場や客室露天の泉質のよさも満足度が高いという。

 ワーキングマザーが通う箱根本箱は、新書と古書、洋書を合わせて1万冊以上のストックを誇る。運営母体は雑誌『自遊人』を発行するメディア・クリエイション・カンパニーの自遊人だ。

箱根本箱のホームページ

 同社は、長野・松本市の老舗旅館を再生した松本十帖にも、目玉の1つとしてブックホテルの松本本箱を設置している。宿のエントランスから続く本の道や、ブックディレクターの幅允孝氏率いる選書集団BACHなどが選んだ本を集めたげんせん本箱、浴場だった場所を改装した“本に溺れる”オトナ本箱、迷路のある本棚に絵本が並ぶこども本箱などのコーナーがあり、テーマパーク感覚で楽しめる。