さらに巨額な国債はどうする

 ところで、先ほど挙げた日本銀行の営業毎旬報告によれば、2025年9月末の日本銀行の保有国債は約557兆円である。額としてはETFよりはるかにこちらの方が大きい。日本銀行の本来のバランスシートの大きさを議論する上では、この国債の方が重要かもしれない。

 現状は、長期金利への影響も考慮され、緩やかな減少が想定されている。しかし、これもETFと同じで、いつ何時、再び日本銀行がバランスシートを拡大し始めなくてはならなくなるか分からないので、ゆっくりであれば良いというものではない。

 本来、日本銀行が持つべき国債の額は、様々な要因に規定されるので分かるわけがないとみる向きもあるだろう。特に、日本銀行が保有する国債は、そのバランスシートの反対側に上述の当座預金がある。

 したがって、その時々の政策金利の誘導目標を円滑に実現できるよう、日本銀行の取引先金融機関がどれほどの当座預金の量を需要するかがポイントになる。銀行の資金繰り管理体制の変化、流動性規制の導入などによって、当座預金の水準が、ゼロ金利導入前の理屈で決まるようになることはもう二度とないだろう。

 他方で、日本銀行保有の国債の一部はどうせ“根雪”なのだから、例えば永久国債に置き換えて長期債市場における長期金利形成から遮断してはどうかといったアイディアも聞かれる。しかし、それではその見合いとなる日本銀行の負債はどうするのかという問題が残る。両方を視野に入れれば、国債に関しても、資産・負債両方を日本銀行のバランスシートから切り離すという思考実験にも駆られる。

 こうした話は、どのようなものであれ、どうも夢物語のようになってしまう。実務に携わる方々のお知恵を是非ご教授願いたいところだ。もっとも、中央銀行がその国の名目GDPの15%を上回る上場株式を資産として保有するに至り、その売却を100年以上かけて完遂しようというのもまた、夢物語のような気がしてならない。