外貨準備におけるドルの保有比率は過去最低を記録した(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
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(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

ドル比率は過去最低だが、IMFは思惑をけん制

 10月1日、国際通貨基金(IMF)から外貨準備の構成通貨データ(COFER)が公表されている。為替市場を中長期的に展望するにあたって重要なデータであるため、筆者は定期的に観測している。

 世界の外貨準備は2025年6月末で前期比+4048億ドルの12兆9448億ドルと増加した。後述するように、2025年3月末から6月末は「解放の日(4月2日)」を挟んで極端なドル安相場が発生した期間であり、米インターコンチネンタル取引所(ICE)のドルインデックスで▲10%以上、国際決済銀行(BIS)公表の名目実効為替相場(NEER)でも▲5.0%の下落に直面している。

 今回、IMFは発表に合わせて「為替調整後のドル比率は安定(Dollar’s Share of Reserves Held Steady in Second Quarter When Adjusted for FX Moves)」と題したIMF Blogを公表している。

 後述するように、今期のドル比率は56.32%と過去最低を更新しているため(図表①)、「ドル離れ」というテーマ化が市場の思惑によって暴走しないように配慮したのかもしれない。

【図表①】

 ブログでは、「決定的な点(a crucial detail)がしばしば見落とされがちである。それはドル建てで報告されているということだ」と冒頭で指摘し、「為替変動が起きれば中銀が何もしなくても比率は動く」と周知の事実を改めて確認している。

 具体的にブログでは「ドルインデックスは上半期に▲10%以上下落し、これは1973年以来で最大の下落だった」との事実が指摘され、4~6月期の3カ月間だけでドルは対ユーロで▲7.9%、対スイスフランスで▲9.6%も下落したという事実が確認されている(ちなみに、上半期まで範囲を広げればそれぞれ▲10%以上、▲11%以上の下落)。

 なお、ドルの対スイスフランに対する上半期の値動きとしては過去10年間で史上最低だったという。