2025年9月18日、世界陸上東京大会、女子200m準決勝での井戸アビゲイル風果 写真/長田洋平/アフロスポーツ
(スポーツライター:酒井 政人)
混合マイルは日本新で決勝進出!
9日間の激闘に幕を閉じた東京2025世界陸上。今回は日本勢にとって“ニューカマー”となった選手たちの活躍をお伝えする。まずは大会初日(9月13日)の混合4×400mリレーだ。
同種目は世界陸上で3大会前から採用され、日本は2019年のドーハ大会(3分18秒77)と2022年のオレゴン大会(3分17秒31)に出場。いずれも日本記録(当時)をマークしながら予選8着に沈んでいる。
モーニングセッションで行われた予選1組に今泉堅貴(内田洋行AC)、井戸アビゲイル風果(東邦銀行)、吉津拓歩(ミキハウス)、松本奈菜子(東邦銀行)のオーダーで出場。アンカー松本がジャマイカを抜き去ると、従来の日本記録(3分15秒71)を大幅更新する3分12秒08で5着に入った。
過去の世界陸上を振り返ると“大幅進化”したといえる結果だ。しかもサプライズが待っていた。失格チームが出て、繰り上がりでの決勝進出が決まったのだ。
この結末をテレビ中継中に知らされた選手たちは大興奮。今泉が「何も言えないっす」と驚くと、井戸は「ヤバイですね。もう1本走れるのはうれしいです」と声を弾ませた。
4人はイブニングセッションの決勝で再登場。男子の走順を入れ替えて勝負するも、3分17秒53の8位に終わった。世界の実力に圧倒されたかたちになったが、日本勢初の快挙に4人は充実の表情を見せていた。
「予選で日本記録を達成できたのは良かったですけど、決勝は自分でも納得いかない走りになってしまいました。それでも初めての世界大会で自分のレベルを再確認できましたし、大声援のなかを走ることができて良かったと思います」(吉津)
「決勝では離れていく背中を追いかける感じで、400mは自分で走るというところができていないなと思いました。自国開催の応援は凄く心強く、本当に力をもらいました。感謝の気持ちでいっぱいです」(井戸)
「決勝は世界に跳ね返される結果になりましたが、ファイナルに残れた事実は私たち4人だけでなく、日本の400mを底上げしてきたすべてのランナーにとっての結果のひとつ。そこは本当に誇らしく思います」(今泉)
「予選を通過するためには絶対に順位を上げてやるという気持ちで走りました。決勝の舞台を勝ち取れたのは価値あることだと思います。決勝も自分のなかでは落ち着いて闘志を燃やしながら走ることができました」(松本)
混合マイルは個人種目に出場する選手の参戦が難しい状況だが、日本のロングスプリントはレベルが上昇中。今後は上位入賞が期待できる種目になるかもしれない。