テック首脳をホワイトハウスに招いて行われた夕食会でトランプ大統領の隣に座ったメタのマーク・ザッカーバーグCEO(9月4日、写真:ロイター/アフロ)
米IT大手のメタが、長年のライバルである米グーグルと6年間で100億ドル(約1兆5000億円)規模のクラウドコンピューティング契約を締結したことが分かった。
メタは、生成AI開発競争で優位性を確保することを目指し、グーグルの最先端インフラを利用する。
広告事業やAI開発で激しく競合してきた両社の接近は、「GAFAM」と呼ばれる巨大テック企業の競争が、単純な敵対関係から、互いの強みを利用し合う「協調と競争(Co-opetition)」時代へ移行したことを意味する。
AI開発の「時間」を買うメタの決断
米ブルームバーグ通信などの報道によると、今回の契約でメタは、グーグルのクラウドサービス「Google Cloud」のサーバーやストレージを大規模に活用する。
その最大の狙いは、AI開発競争で不可欠な膨大な計算基盤を「即座に」確保することにある。
メタのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、人間を超える「超知能(スーパーインテリジェンス)」の開発を目標に掲げ、AI分野に数千億ドル(数十兆円)規模の投資を公言。
破格の報酬で競合からトップ人材を引き抜くなど、AI覇権の確立に向けて攻めの姿勢を鮮明にしている。
しかし、AIの学習や運用には膨大な計算資源が必要であり、自社でデータセンターを建設するには数年の歳月を要する。
実際、同社は米南部ルイジアナ州に巨大施設を建設中だが、完成を待っていては競争に乗り遅れるという強い危機感があった。
そこでメタは、ライバルではあるものの、AI半導体「TPU(Tensor Processing Unit)」を自社開発するなど、AIインフラで世界最高水準の技術を持つグーグルから、「時間を買う」という戦略的決断を下した。