アップルが発表した最新型のスマートフォン「iPhone 17 Pro」(9月9日、写真:ロイター/アフロ)
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 米アップルが、長年開発の遅れが指摘されてきたAI分野で、方針転換を迫られている。

 8月下旬、自社の音声アシスタント「Siri(シリ)」の次期刷新版の基盤技術として、ライバルである米グーグルの生成AI「Gemini(ジェミニ)」の採用を協議していると報じられた。

 この動きは、AI開発競争で苦境に立たされているアップルが、先行する競合の力を借りてでも巻き返しを図ろうとする、切迫した状況を浮き彫りにしている。

AIの劣勢挽回へ、ライバルとの提携に活路

 報道によると、アップルは来年リリース予定のSiri刷新版の基盤技術として、グーグルのカスタムAIモデルを採用することを検討している。

 これは、長年性能不足が指摘されてきたSiriを抜本的に改善するための動き。

 この報道を受け、市場は即座に反応。アップル、そしてグーグルの持ち株会社であるアルファベットの株価はともに上昇した。

 アップルにとっては長年のAI開発の遅れを解消する一手、グーグルにとってはAI技術の収益化を加速させる一手。これらが市場から好意的に受け止められた。

 アップルは、AI新興の米アンソロピックや、「Chat(チャット)GPT」を手がける米オープンAIとも提携を模索してきた。

 業界トップの技術を持つライバルとの協議に至ったことは、アップルが直面する課題の深刻さを物語っている。

開発の難航が浮き彫りにしたAI戦略の課題

 この戦略転換の背景には、AI開発の遅延がある。

 特にSiriは、複雑な指示への対応や、外部アプリとの連携において、米アマゾン・ドット・コムの「Alexa(アレクサ)」や「Googleアシスタント」に大きく水をあけられていた。

 英ロイター通信は、「Siriはこれまで複雑で複数段階にわたるリクエストの処理や、サードパーティー製アプリとの連携において、競合に劣っていた」と指摘する。

 アップルはこの状況を打開すべく、Siriの大規模な機能刷新を進めてきたが、その開発は難航。

 今年3月には、当初春に予定されていたアップデートが、技術的な問題から1年延期されることが明らかになった。

 この遅延は投資家の懸念を呼び、同社株は大きく下落。主力製品であるiPhoneの販売への悪影響も指摘された。