サプリ購入をめぐる疑惑を受けてサントリーHDの会長を辞任した新浪剛史氏(写真:ロイター/アフロ)
違法な成分を含む可能性のあるサプリ購入をめぐる捜査を受け、サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史氏が9月1日付で会長を辞任しました。新浪氏本人は疑惑を否定していますが、こうした違法薬物をめぐる問題は近年、社会で大きな注目を集めています。しにせ上場企業のトップもその疑惑に包まれたことで、問題の深刻さが改めて浮き彫りにしました。もっとも経営者と違法薬物の関係が問われたのは、今回が初めてではありません。いったい、何が起きているのでしょうか。過去のケースも踏まえながら、やさしく解説します。
新浪氏が使ったサプリとは
新浪剛史氏は三菱商事を経てローソン社長となり、2014年に創業者一族以外から初めての社長としてサントリーHDに迎え入れられました。経済同友会の代表幹事として財界活動にも熱心。歯に衣を着せぬ発言の数々で知られ、財界の顔として知られていました。
そんな人物が違法薬物使用の捜査対象になったのです。
サントリーHDの説明などによると、福岡県警は、大麻由来の違法成分を含んだサプリメントの密輸事件を捜査中、関係先の1つとして新浪氏の自宅(東京都港区)を麻薬取締法違反などの疑いで家宅捜索しました。製品は発見されず、新浪氏も任意の取り調べで事件への関与を否定しましたが、本人は辞表を提出。「潔白」を主張しつつ、サントリーHDを去ることになったのです。
新浪氏はどんなサプリを使ったのでしょうか。
9月3日に経済同友会の代表幹事として記者会見に臨んだ新浪氏によると、海外出張が多く、時差ボケや不眠に悩んでいた同氏は米国出張の際、知人に大麻草由来の「カンナビジオール(CBD)」というサプリを薦められました。
CBDは、日本では規制対象になっておらず、日本でも同種の製品は流通しています。そのため、新浪氏は「米国で買ったほうが安い」と判断。知人に日本へ持ち帰ってもらったと言います。
ところが、福岡県警はこのサプリについて、日本で規制されている大麻成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」を含んでいるとして、捜査に乗り出していました。同じ大麻由来であっても、日本では違法性のないCBD、麻薬及び向精神薬取締法の処罰対象となるTHC。同じ成分であっても国によって規制が異なるという背景もあります。
実は、違法薬物による企業トップの不祥事は、今回のサントリーHDだけではありません。過去にいくつものケースが発覚しています。それぞれの理由と共に見てみましょう。