楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、ふるさと納税仲介サイトのポイント付与を事実上禁じたことに反発、3月に石破茂首相に約295万人分の署名を提出した(写真:共同通信社)
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今年7月末に発表されたふるさと納税の2024年度の寄付総額は約1兆2728億円に上り、5年連続で過去最高を更新した。寄付者は約1080万人に達し、住民税納税者の5人に1人が利用している計算になる。年収が確定し寄付金控除を受けられる上限額が決まる12月の駆け込み寄付はもはや年末の風物詩と化した感があるが、今年はこの9月末にも寄付のピークがありそうだ。10月以降、寄付へのポイント付与が封印されるためだ。一部の仲介サイトには「最大300%還元」を掲げて寄付を煽る動きもある。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

ポイント競争過熱に総務省がストップ

 ふるさと納税は、本来支払うべき住民税の一部を、応援したい自治体に寄付という形で付け替えることができる制度。多くの自治体は、寄付額に応じた特産品や地域で利用可能なサービスなどの返礼品を用意している。寄付者にとっては受け取った返礼品と“実質負担”の2000円(所得税や住民税の寄付金控除の対象になるのは「総寄付額-2000円」)の差額分がお得になる。

 ふるさと納税の利用者の多くは仲介業者によるサイトを通して寄付をしている。仲介業者にはふるさとチョイスやさとふる、ふるなびといった専門サイトに加え、楽天、au、JRE、JAL、ANA、三越伊勢丹など他業種からの参入組も多い。さらに、この1年でもAmazonやYahoo!、コンビニ大手のローソンやファミリーマートなどの参入が相次ぎ、国税庁に特定事業者の指定を受けている業者だけでもゆうに20を超えている。

 近年は仲介業者による寄付者獲得のためのポイント競争が過熱しており、ふるさと納税を管轄する総務省からストップがかかった。2024年6月に出された「寄付に対してポイントを付与する仲介業者を通じて寄付を募ることを2025年10月から禁止する」という通達がそれで、「ポイント競争は自治体の支援や地方創生というふるさと納税の本来の趣旨からずれたもの」というのがその理由だ。

 ポイント付与の費用は仲介業者が負担しているとしても、めぐりめぐって自治体が仲介業者に支払う手数料に転嫁される可能性がある。ふるさと納税として動くお金はあくまで税金。総務省は自治体が行政や住民サービスに活用できる歩留まりを増やすべく、これまでも返礼品の仕入れ額が寄付額の30%以内、経費はトータルで50%以内に収めるといったルールを導入してきた経緯がある。

 しかし、ポイント付与の禁止には仲介サイト最大手の楽天が強く反発。「民間原資のポイントまで規制するのはおかしい」と通達が出た直後から自社サイトで反対署名を募り、今年7月には東京地方裁判所に総務省の決定の無効を求める行政訴訟を起こしている。