草創期の6人の女流棋士。左から、女流アマ棋界で最強だった関根紀代子(当時33=現女流六段)、元奨励会員の蛸島彰子(同29=現女流六段)など 写真提供/田丸 昇(以下同)
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(田丸 昇:棋士)

女性の将棋棋士はなぜいないのか

 将棋を題材にした小説や漫画では、初の「女性棋士」を目指す設定が多く、四段に昇段して棋士の資格を得て活躍する展開となる。しかし、現実には女性の棋士はまだ誕生していない。

 囲碁界には女流名人戦、女流棋聖戦など、女流の名称が付く棋戦がある。ただ出場した女性は「女流棋士」ではなく、女性棋士と呼ぶ。男性も女性も棋士になる過程は同じで、男女の区分はない。近年は女性棋士の活躍がめざましく、2024年の賞金・対局料のランキングでは、藤沢里奈七段(26)が約3500万円を得て4位に入った。

 将棋界は四段から、囲碁界は初段からプロ棋士として認められる。この制度の違いによって、女性の囲碁棋士は約70人いるという。先日に引退を表明した杉内寿子九段(98)は、80年以上にわたって現役を続けてきた。

 女性の将棋棋士は皆無だが、将棋界は歌舞伎のように男性に限定しているわけではない。奨励会(棋士養成機関)で四段に昇段する壁が厚く、多くの女性会員が阻まれてきた。

 女性の囲碁棋士は多くいるのに、女性の将棋棋士はなぜいないのか……。

 前述の棋士になる昇段基準のほかに、将棋は女性愛好者がもともと少ない、将棋は勝負のつき方が囲碁より激しい、などの理由が挙げられる。私見では歴史の違いも大きいと思う。