藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦の第2局が、2月24日に行われる。2月4日の第1局は、非常に珍しい「持将棋」(じしょうぎ)で引き分けとなった。藤井棋王は公式戦初の持将棋となり、「伊藤七段の手のひらの上というような将棋になってしまった」と振り返っている。引き分けスタートとなったことで、5番勝負は最大で第6局までおこなう。注目の同学年対決の行方はどうなるのだろうか。
(杉原健治:フリーライター)
藤井聡太棋王キャリア初の持将棋
藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=八冠)に伊藤匠七段が挑戦する棋王戦コナミグループ杯の5番勝負が、「持将棋」という珍しい結果になったことで話題になっている。2月4日に富山県魚津市の「新川文化ホール」でおこなわれた同学年対決は、藤井棋王の先手で角を交換する角換わりの形でテンポよくスタート。藤井棋王は2016年10月にプロ入りしてから初めてとなる持将棋に、「全く意識していなかった」と振り返っている。
持将棋とは互いの玉が敵陣の3段目以内に入った状態で、詰ませる見込みがなくなった場合をいう。両対局者の合意によって成立し、玉を除いた駒のうち飛車・角を各5点、その他の駒を各1点としてその合計が両者とも24点以上あることが条件となる。
両者合意の上で引き分けに
面白いのが「合意の上で引き分けになる」という点。今回の対局では129手で伊藤七段が「持将棋ですかね」と持ちかけ、藤井棋王が「はい」と同意し持将棋が成立した。持将棋はタイトル戦では一局と見なして完結するため、指し直しではなく引き分けとして扱われる。よってスコアは両者ともに0勝0敗1分という結果に。
タイトル戦対局のあと、藤井棋王は「途中までは考えたことがある将棋だったが、飛車を抑えられ自信のない展開に」「こちらの工夫が足りず、結果として伊藤七段の手のひらの上というような将棋になってしまった」と悔しさを滲ませた。一方の伊藤七段は「後手としては持将棋を目指す展開になった」「後手玉が入玉するまで手数がかかるのでかなり神経を使った」と語っている。