25年卒の就活が本格的に始まる(写真:Spica/イメージマート)

3月1日から、多くの企業が2025年3月に卒業予定の学生を対象にした採用情報の公表を始める。いわゆる「就活解禁」だ。すでに一部の気の早い企業では採用活動がスタートしており、内定を出す企業も徐々に増えてくるとみられる。そうした中、激しい人材争奪戦を受けて、企業が学生の親に自社の紹介や挨拶をすることで内定の承諾を得る「オヤカク」という取り組みが広がっている。主に内定辞退率を減らすために実施されているオヤカクだが、批判的な声も少なくない。オヤカクが必要とされるようになった背景やその実情を見てみよう。

(杉原健治:フリーライター)

新卒採用の新たな突破口「オヤカク」

 リクルートの就職みらい研究所が行った『就職プロセス調査(2023年卒)「2023年3月度(卒業時点)内定状況」』によると、学生の内定辞退率(3月卒業時点)は2021年から2023年の2年間で8%増加している。企業は学生の内定辞退率を下げるために様々な策を講じており、その中でも特に注目されているのが「オヤカク」という取り組みだ。

 オヤカクとは、学生の親に自社の紹介や挨拶をすることで内定の承諾について確認する行為を指す。主に親の反対を理由に内定を辞退する学生を減らすために行われている。

 マイナビが、就職活動を終えた、もしくは現在活動中の子どもを持つ保護者1000人を対象に実施した「マイナビ2021年度 就職活動に対する保護者の意識調査」では、49.9%の保護者が子どもの内定先からオヤカクを受けたと回答。オヤカクというキーワードが、新卒採用の現場で新たなスタンダードとなりつつあることを浮き彫りにした。

内定の連絡を待つ(写真:maruco/イメージマート)

少子化やひとりっ子世帯の増加がオヤカク誕生の理由?

 一昔前なら社会人1年目とはいえ、20歳を超えた大人の決めたことにどうして親が介入してくるのかと言われるかもしれない。

 しかし時は流れ、現在は少子化が進みひとりっ子家庭も珍しくない。子どもの数が減ったぶん、我が子の教育や将来に積極的に関わる親も少なくない。「親がやめろと言っている」「親に別の企業をすすめられた」などの理由で内定辞退をする学生が相次いでいるのだ。

 実際に就活オファーサービス「dodaキャンパス」が、2023年12月に大学2、3年生を対象に行った「自身の就活やキャリア観醸成に影響を与えた人や経験・体験」についての調査では、就活生の4人に1人が就職先の企業を検討する際に「親(父親・母親)」の意見やアドバイスを最重視すると回答。内定辞退を回避する秘策としてオヤカクは理にかなった方法と言えるのだ。